4月の「合掌聞法」(手を合わせて感謝し、お話をよく聞こう)は、先ずは自分が新しい環境になじんでいこうという徳目ですが、園生活にだいぶ慣れてきた今、今度は、積極的に世の中に尽くそうというのが徳目になってきます。
 「布施奉仕」から私が連想したのは、去年(2018年)の今ごろ、タイで洞窟に閉じ込められた少年たちを救おうとボランティアたちが活動していた時、ダイバーの一人が命を落としたことです。
 その後、あの場所には、そのダイバー サマン・クナンさんの銅像が建てられ、今年(2019年)6月24日には像の前で、少年たちほか多くの人が追悼法要に参加したそうです。
 一方、 「自利利他」からは、間もなく新札の肖像画となる予定の渋沢栄一しぶさわえいいちが思い浮かびました。
 国立市とは、一橋大学の創立者、滝乃川学園の元理事長という点でご縁のある渋沢栄一は、「本当の利益というものは、道義にかなったところから生まれる」という思想を持っていて、「義利合一」「経済道徳説」「論語と算盤」といった言葉を残しています。

 人には、幸いに「他の人たちの役に立ちたい」という本能があります。
 子どものお手伝い活動でも、できるだけ「~~しなさい」という命令文は避けたいものです。
 それより、「~~してくれて助かったよ。有り難う!」と言った方が、無理なく奉仕の行ないがなされ、また定着するのではないでしょうか。

 お盆では、他人に尽くさなかった目連さま母子が地獄の苦しみを味わい、しかし、お釋迦しゃかさまの導きで他人への感謝にめざめ、救われたお話をします(紙芝居、諸橋精光『おぼん、もくれんさんのおはなし』鈴木出版を使用)。

 平和の日の集いでは、人間の我欲が膨張して戦争という最悪の事態を招いてしまったことを考えます(題材には、元テレビ番組で後に本になった、NHK出版『証言記録兵士たちの戦争3』「回天特別攻撃隊 人間魚雷 悲劇の作戦」を使用)。

 夏は、葉が茂り、花が咲き、太陽が輝き、それだけでも嬉しくなる季節です。
 せっかくの夏、安全や健康に気をつけて思いっきり楽しみましょう。

少年たちの救出活動中に落命したサマン・クナンさんの像:
https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201911/CK2019111102000082.html

「人間魚雷 回天」のNHKの番組の紹介サイト:https://www2.nhk.or.jp/archives/shogenarchives/bangumi/movie.cgi?das_id=D0001210026_00000

(『園だより』令和1=2019年7,8月合併号を基に改編)

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