東日本大震災(平成23=2011年3月11日)9周年も近づく最近、(放映途中で気づいたのですが、)
 『心の傷に寄り添う~訪問型ケアの現場から~」(令和2=2020年2月16日、NHK総合)という良い番組に巡りあうことができました。
 その中で、当時、福島から避難した元福祉施設職員、およびその人をケアする医師の話が心に残りました。

 その元職員は、現地に残った入所者や同僚たちもいるのに、自分が逃げたという罪悪感にとらわれ、苦しみ続けています。
 そんな中、その医師は、彼が、実は、避難先の山形で他の避難者たちを助けていたことを発見し、それを治療に用い、彼に立ち直りのきっかけを与えたという話です。

 この時、医師が彼に、ただ「あなたは悪くないよ。避難したのは当然の行為だよ」と言っただけでは、恐らく、彼は「でも、私は間違いなく逃げてしまったんだ」と自分を責め続け、心の病気もそのままだったでしょう。
 しかし、この医師には「慈悲」と「智慧」があり、本人の「他者援助」という事実を使いました。その結果、彼には回復という「希望」が見えてきたのです。

 この番組のエンディングでも、たまたま、同じ日に催された應善寺おうぜんじでのバイオリン・コンサート(令和2=2020年2月16日)でも『花は咲く』が演奏され、以前、当園の「成道会生活発表会」で、当時の園長や職員たちとこの歌を歌ったことも思い出しました。

 「誰かの歌が聞こえる 誰かを励ましてる 誰かの笑顔が見える 悲しみの向こう側に」(作詞:岩井俊二,作曲:菅野よう子『花は咲く』より)

 当園では、この別れと出会いの時季に、こぶし、ついで桜の花が咲き、散り、年度が始まり、また咲いていきます。

 親が子どもが大好きなのと同じように、子どもも親が大好きです。
 保護者の皆さま、この一年間もかけがえのないお子さんをお預けくださり、大変ありがとうございました。職員たちも尽力してまいりました。
 来年度もまたよろしくお願い申し上げます。

(『園だより』令和2=2020年3月号の基となった文章に若干修正を加えたもの)

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