借金苦から、一時は飛び降りるビルを探したという作家の借金しゃっきんだまさんは、
 「もし、あなた(読者)がどん底状態に陥ったら、それは、雪嵐の荒野のようなものだから、先ずは、雪洞にこもって身を守り、それから登山のできる晴れの日を待て」(大意)という話をしています。
 (『発達障害サバイバルガイド』ダイヤモンド社、最終章)

 また、いじめ苦から、衝動的にわが身を傷つけてしまったこともあるタレントの中川翔子さんは、青少年に向けて、
 「思春期の辛い時期は、さなぎの時間と思って、栄養をたくわえてほしい」(大意)と言っています。
 (『死ぬんじゃねーぞ!!』文春文庫、第4章)

 自分がこのように苦しい目に遭いながら、なお、他の人のことを思いやり、対処する方法を教える二人に、私は深く「慈悲」と「智慧」を感じました。

 誰にも必ず苦しい時が来ます。
 かわいい子どもたちもそうです。

 そんな彼らに、我々大人が今するべきことは、その子を肯定し、その存在を丸ごと認め、たっぷりと愛情を注ぎこむことではないでしょうか。
 愛されて育った子は、人を愛せるようになります。
 そして、自分が認められていると実感した子は、自信がつき、それは将来、色々な場面でその子を支えるバックボーンになることでしょう。

 お釋迦しゃかさまは、成道じょうどうされた後、「一切皆苦」「四苦八苦」をお説きになりました。
 「生」に「苦」は付きものであることを、私たちに教えてくださったのです。
 年末になっても、コロナ禍は完全には終結しそうになく、私たちは「ウイズ・コロナ」を余儀なくされています。
 ただ、この言葉は、なかなか佛教ぶっきょう的な響きを持っていると思います。
 この12月、みんなで「成道会じょうどうえ」をお祝いし、共に「和顔わげん愛語あいご」でお正月を迎えましょう。

 (『仏教保育カリキュラム』2022(令和4)年11月号「12月の徳目・忍辱持久」にほぼ同内容の文章あり)

社会福祉法人和光保育園 副理事長 白井千彰

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