新年おめでとうございます。
 なごやかな笑顔とやさしい言葉で人に接し、相手も自分も、その場にいる他の人たちも、みんな良い気分になる「和顔愛語わげんあいご」。素晴らしい言葉ですね。
 しかし、今はとても笑顔になれるような状態ではない、という人も中にはいるでしょう。
 難しいですね。「正直」に暗い顔をしていては、周りの人たちをも暗くしてしまうし、自分の心に「嘘」をついて無理に笑顔を作るのも良いこととは思えません。
 そういう時は、自分の中から良い所を探し出し、あるいは、例えば、子どもの笑顔などを見て、こちらも思わず笑ってしまうなどというのはどうでしょうか。
 世の中に、100パーセント良い人間などいませんが、100パーセント良くない人もいません。
 自分の長所を探そうともせず、自分に長所は無いなどと言うなら、それは謙虚ではなく、逃避です。

 昨秋、紅葉の名所としても有名な「九品佛くほんぶつ」に参拝してきました(大井町線九品仏駅)。境内には九体のほとけさまが並んでいらっしゃいます。
 人間はじょうの上からの下まで九つの品格に分けることができるが、そのいずれをも佛さまは救うという象徴です。
 笑いとの関わりで人を三種に分けるなら、「意識していないのに、自然に笑みが浮かび、周囲をさわやかにする」のが上の人、「社会人としての義務感から、笑みを浮かべる」のが中の人、「自分が得をするから、笑みを浮かべる」のが下の人で、いずれも人であり、私たちの仲間、いや私たち自身です。
 そんな我々一人一人に、等しく、新年はやって来ました。
 正月は、先祖たちが考えてくれたリセットの月でもあります。
 昨年、順調だった人もそうでなかった人も、ともに笑顔でお正月を味わいましょう。

(『園だより』平成29=2017年1月号より一部改編)

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